マリンの膀胱炎をきっかけに、腎臓病への対応を考える事になりました。猫の死因の第1位が癌(38%)で第2位を腎不全が22%を占める(サクライマさんのanimoを参照)そうです。特に高齢(7歳以上)になると罹患率が高くなります。そこで少しでも長生きできるように重症になるのを引き延ばすには今どうすれば一番良いかを考えたのでその条件や効果、結果をお知らせします。
対応方法
1 薬による対応
慢性腎不全に対する薬は、現在主なものとして、血管拡張により血圧を下げ抗炎症作用により腎機能の低下を抑制させ細胞を長生きさせるもの(ラプロス(経口投与2回/1日):共立製薬)や尿中に排出される蛋白漏出を抑えるもの(セミントラ(溶液経口投与1回/1日):ベーリンガーインゲルハイムベトメディカジャパン、フォルテコール錠(経口投与1回/1日):ノバルティスアニマルヘルス)などがあり、ラプロスとセミントラの2つは最近動物薬として新たに販売されたもので今後症例がたくさん集まり効果や副作用などがはっきりしてくると思われます。
2 サプリメントによる補助対応
まず第一に行われるのが、腸管による毒素の吸収を妨げる活性炭の給与があげられます。主なものとして「ネフガード」などが販売されています。又腸管の環境を良くし毒素をなるべく出さないようにするために乳酸菌が良い効果を発揮します。乳酸菌は生菌でなくても効果がでるそうです。活性炭と乳酸菌が配合された「ネコジーン」というおやつ感覚で与える事ができる健康補助食品もあります。又食事性のリンを吸着して腎臓の負担を軽減する「カリナールコンボ」という健康補助食品などもあります。
人間と同じですが、それに加え必須脂肪酸が腎臓の働きを助けてくれる(血流改善と降圧:ネコホスピタル参照)そうで、なかでも体内で作ることができないDHAなどのオメガ3を摂取することが大事となります。「アンチノール」などのサプリメントがあります。
3 食事療法
とても重要なのが、食事療法です。毎日の食事が体にマイナスに作用しないようにすることが大事となります。余計な負担を腎臓や肝臓にまずかけないという事ですね。猫は肉食動物ですのでメインはヘルシーなチキンなどの鶏類の肉や魚でアレルギー物質を含む小麦などの穀類は消化能力の面からも極力避けたほうが無難です。当然合成着色料や合成保存料、化学調味料など体に良くないもの、発がん性のあるものなどは一切未使用が原則です。まずはこの条件に近いもの、メーカーを選定します。次に腎臓病ケアの療法食があるかどうかの確認、最終的に値段との相談になります。腎臓病用の療法食の特徴は、BUN(尿素窒素:タンパク質を分解し消化吸収利用したあとできる最終代謝産物)を増加させない為、消化の良いタンパク質を27%以下に抑えてあり、次にリンの含有率を0.8%未満(0.5%前後が主流)とするのが大まかの療法食の特徴です。
検討の結果、次のメーカーの療法食を食べさせてみることにしました。
成分量及び主な材料名の表を添付して置きます。
単位:% | |||
animonda | FORZA10 | Vet’s Selection | |
たんぱく質 | 26.0 | 26.0 | 27.0 |
脂質 | 24.5 | 18.5 | 15.0 |
灰分 | 4.0 | 6.8 | 8.0 |
カルシウム | 0.65 | 1.4 | 0.6 |
リン | 0.45 | 0.8 | 0.5 |
マグネシウム | 0.1 | 0.08 | |
ビタミンA | 21000IU/kg | 11000IU/kg | |
代謝エネルギー | 384kcal/100g | 370kcal/100g | |
Omega3 | 0.9 | ||
Omega6 | 3.5 | ||
リノール酸 | 2.6g | ||
主な原材料名(多い順) | |||
animonda | FORZA10 | Vet’s Selection | |
ドライポテト | 米 | 米粉 | |
エンドウ豆粉末 | 魚蛋白 | ビーフミール | |
獣脂ミール | ポテト | 動物性油脂 | |
ポテトスターチ | 魚粉(アンチョビ) | チキンミール | |
鳥脂肪 | 海藻(アスコフィルム結節) | ビートパルプ | |
牛脂 | コーン油 | 酵母エキス | |
鶏肉紛 | 魚油 | 精製魚油(DHA,EPA源) | |
ビートパルプ | ミネラル | 植物性油脂 | |
鶏レバー | 乾燥酵母 | オリゴ糖 | |
サーモンオイル | タウリン | 鰹 | |
ユッカシジゲラ | ビタミン | 活性炭 | |
ビタミン類 | DLメチオニン | 殺菌処理乳酸菌 | |
ミネラル類 | ユッカシジゲラ | 乾燥カモミール | |
ローズマリーエキス | 乾燥ローズマリー | ||
ハギ | ミネラル類 | ||
クランベリー | アミノ酸類 | ||
タンポポ | ビタミン類 | ||
クエン酸 | |||
バターオイル | |||
(食塩) | (食塩) | ||
100g当たりの単価 | 432円 | 305円 | 161円 |
注1:赤字は好ましくない材料 | |||
注2:太字は注目した材料 |
4 結論
まず、現段階では血液検査によるCRE(クレアチニン)と尿比重の値はIRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)の重症度判定ではBUN(23.1)、CRE(1.3)とも血液生化学検査の数値はなんとか正常値範囲であり、尿比重(1.032)もぎりぎり正常値の範囲であることから、ステージⅠ(CRE1.6以下、尿比重1.028~1.050)すなわち残存腎機能100~33%と予想される状態と思われます。血液検査等で異常値が初めて検出された段階のステージⅡになると残存腎機能が33~25%とすでに腎機能が30%前後しか機能しない状態となってしまっていることから、今BUNやCREが正常値であっても安心はできないわけです。よって現段階から予防的に投薬をしたほうが良いのですが、毎日1回又は2回強制的に口を開けて投薬する(死ぬまで毎日継続が必要)事は、ひじょうにストレスであり腎不全の臨床症状(元気食欲低下、嘔吐、下痢、体重減少、毛づやが悪くなる等)がまだ認められないことから(多飲多尿は若干認められる)投薬についてはもう少し様子を見ることにしました。
そこで今は療法食を中心に不足成分については健康補助食品を給与する方向で考えました。
療法食ではFORZA 10(イタリア産)のRENAL ACTIVE と animonda(ドイツ産)のINTEGRA PROTECT NIEREN、国産からVet’s Selectionの腎ケアBP(PP)レーベルの3品目をピックアップ(まだまだたくさんの商品があり、とても迷いましたが材料を中心に値段を加味し選定しました)して、まず嗜好性ようするにちゃんと食べるかどうか(猫によって当然好き嫌いはありますが、今回はマリン8歳を対象に実施しました)を試験してみました。順番として現況のロイヤルカナンのエイジングケアステージⅠにanimondaを毎日10g(概ね一日総給与量で50g程度)増やしていき約1週間で全量に変えるスピードで行いました。(本来はもっとゆっくり時間をかけて少しづつ増やしていくのが良いのですが、購入量(300g)と時間の関係で短期間の試験となってしまいました)
animondaの粒(右)は写真でもわかるように非常に大きい粒(15mm前後)で少し心配しましたが、食べるのには問題ない様で飽きずに食べていました。取り敢えず全量アニモンダに変わった時点で尿検査を実施。その結果、PH7前後 蛋白± 潜血+++と給与前と若干変化し尿のPHが酸性5.5から中性に変化しました。(フードの影響かは定かではありません)1袋300gしかないので、すぐにFORZA 10を10g加えて次の日アニモンダが無くなったのでFORZA 10にエイジングケアステージⅠを半分加え、次の日25%、3日目には全量FORZA 10としました。FORZA 10の粒はハート形と丸型の二種類に分けられており、大きさは写真の通りロイヤルカナン(エイジングケア)とほぼ同じくらいの大きさ(5~6mm)で食べるには食べましたが、他に比較していまいちの食い付きでした。全量に変わってから3日目の時点で再度尿検査を行いましたが、アニモンダと同様の結果でした。最後に国産のVet’s Selectionを同じように毎日10gづつ増やして約1週間で全量に変えました。粒の大きさはFORZA 10とほぼ同じ大きさですが、非常に薄く厚みがありません。活性炭が入っているので色は黒色です。嗜好性もまずまず問題ありませんでした。尿検査も同じように行いましたがPHが6前後とやや酸性になり蛋白が++、潜血は変わらず+++という結果となりました。Vet’s Selectionにはちょっと気になる材料ビーフ及びチキンミールが入っていたので内容をメーカーに確認したところ、人間の不可食部分(多分畜産物の肉を除いた残渣など)を化製場で処理したものとのこと。活性炭と乳酸菌がこのフードには入っていることからこのフードを有力候補と考えていましたが、化製場由来で使われている材料が不明確ということから残念ながら最終的に不採用としました。しかしここに目をつぶれるならとても安価で乳酸菌や活性炭も同時に補給できるのは選ぶ条件としてはありかなとも思います。以上の結果、嗜好性はアニモンダ>Vet’s Selection>FORZA 10の順で全く食べない事はありませんでした。そういうことからアニモンダも材料等文句ないのですが、なんとか食べてくれるなら使用している材料や値段も考慮するとメインの療法食をFORZA 10とし、活性炭をネフガードで補助していく事としました。
ネフガードは粒と顆粒の2種類あり、それぞれ活性炭の成分量は63.75mgと170mgで、ささみや魚の缶詰と混ぜて与えてみましたが、当初無味無臭のようで問題なく一緒に食べていましたが、粒のほうは慣れてくるとまだ溶けずに固いままだと吐き出すようになりました。効果を発揮するには体重にもよりますがマリン(4.5kg)の場合は3粒又は1包が目安で1日当たりの金額からすると、3粒(60円)に対し顆粒は32円と安くつき、一緒に混ぜた缶詰等を残した場合はその分捨てることになってしまいますが、顆粒のほうが選り好み出来ずトータルで体内に入る給与量が多いと判断し顆粒を毎日1包与える事にしました。
又腸内環境に良い乳酸菌を補おうと思っていますが、これらについては更にお金もかかりますのでもう少し腎不全に伴う症状等状況を見ながら追加しようと思っています。(ネコジーンだと活性炭と乳酸菌の両方が摂取できてよいのですが、なにせ1か月5千円前後かかってしまう・・・トホホ)オメガ3については、基本的にはどのフードにも入っていると思われますが、一応選択したFORZA 10には入っている量がきちんと表示されているので、充足かどうかは別として取り敢えずこれで良しとしました。
以上現在はロイヤルカナンのエイジングケアを与えていましたが、たんぱく質が34%もあることから変更することにしました。これからしばらくはFORZA 10の腎療法食と活性炭を給与していき食いつきが悪くなったらアニモンダと交互に与えていこうと思っています。半年後に血液検査を実施して効果を見てみたいと思っています。その時又報告させていただきます。
2022年に結果報告
以上の結果をふまえ、FORZA10を2年ほど継続して給与しました。活性炭のネフガードは半年ほど継続しましたが、だんだん食いが悪くなり入れると食べなくなったことから中止としました。それ以後具合が悪くならないので血液検査等する機会がなく現在まで至っております。よって腎臓がどの程度悪くなっているか判断が付きません。
現在はロイヤルカナンのユリナリーS/O CLT エイジング7+(蛋白30%) と早期腎臓ケア(蛋白26%)を混ぜて給与しています。血尿は出たり治ったりを繰り返しています。
血液検査を実施した時に再度結果を報告させて頂きます。
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